夏のビーチとジェンダー観🇩🇰

どうも、ねじまきです。
ドーナツレターでは今月から、
毎月24日にエッセイを配信することになりました。

性別・国籍・信条 問わず、いろんな方に書いてもらう予定です。

ということでここからは、
デンマーク在住の おなみさん に寄せて頂いたエッセイを読んでみてください。
ねじまき 2022.06.24
誰でも
***

『夏のビーチとジェンダー観』 

澄みきった空気が気持ち良いデンマークの初夏。

首都コペンハーゲン。
何の変哲もないビーチで、私は思いもよらぬ光景を目にすることになる。

“How do you like Denmark?”

私(女性)のパートナー(男性)の女友達Mに話しかけられたとき、
私は思わずドギマギしてしまった。

なぜならデンマークでは、
多くの女性たちがトップレスで夏の海をエンジョイしているのだ。

それも、誰も気にする素振りもなく。 

友人Mもまた、その一人だった。

温泉でもなければ、誰かの胸が目に入ってくるシチュエーションなどこれまでなかった。
同じ「女性」とはいえ、私は相当困惑してしまったのだ。

胸の間に小さなタトゥーを入れたその友人Mに、
「胸のタトゥーcoolだな!いつ入れたの?」

と、あまりにも自然に問いかける私のパートナー。

すごい光景。

パートナーの異性の友人が上半身裸で登場し会話を繰り広げるなんて、日本じゃ絶対にありえないよなぁ。。

私は驚きを通り越して、
デンマーク人であるパートナーにも友人Mにもドン引きしてしまった。笑

デンマークにやってきたのは、2021年春。

デンマークといえば、
社会福祉に長けており、世界の中でも幸福度の高い国として有名である。

また、44歳という若き女性リーダーを持つデンマークは、男女平等やLGBTQ+、
あらゆる「人権」における先進国でもあり、
男性の育児休暇取得率(ほぼ100%)とその日数、
世界初同性のカップルに適用されるシビル・ユニオン(登録パートナーシップ制度)の導入(1989年)などの背景を見ても、
ジェンダー問題に関してかなりアクティブであることは明らかだ。

そんなダイバーシティなデンマークにやってきて、
私は思わぬところで自分自身が抱いている「ジェンダー観」の偏りに気づいて、
少し悲しくなったのだ。

ドギマギして黙り込む私に、「友達の胸なんて見ても何も思わないよ。
それに、男性は当たり前のように上半身裸でビーチに寝そべっているよね。
女性だってそうする権利があると思わない?」

とほほ笑みかけてきたパートナー。

うむ、なるほど。

その考え方は理解できるし、正論だと思うのだけど、、

なんというか、女性が上半身裸ってどうなの?大丈夫なの?それも異性の前で?!と、
どうもモラルが気になりそわそわしている自分がいる。

国が変われば、ジェンダー観も変わる。

当たり前のように従ってきた社会的ルールやモラルも、
一歩外に出てみれば、当たり前ではない。

女性は肌の露出を減らし、性的な印象を与えないような身だしなみを心がけるというのは、
男性優位社会における「美徳」や「道徳観」なのかもしれない。

頭の中で何を「普通」とみなし、何を「倫理的に正しい」とジャッジするのか。

もう何十年も、ある道徳観の中で生まれ育った者にとって、
今更それを変えるというのは難しいだろう。

しかし、成長過程で無意識に身につけてきた社会的価値観や道徳観こそ、
大人になり改めて意識的に見直すべき価値観や道徳観なのではないか。

トップレスで夏のビーチをエンジョイする女性たち。

この光景、あなたならどう感じるだろうか?

***

●ペンネーム:おなみ

●プロフィール:兵庫出身、デンマーク在住のおなみです。

2021年春、世界トップレベルのリベラリズム・デモクラシーの根源を探るべく、
デンマークへ単身渡欧。

色んな場面で衝撃を受けている日々ですが(笑)、
本コラムでは、特にジェンダーにまつわる驚きエピソードをお届けします。

京都を拠点に活動しているLGBTQ+ボランティア団体
「カラフル」のメンバーとしても遠隔活動中。

URLはこちら→ https://colorful-kyoto.com/

***

【話題の振り返り】

エッセイのみの配信にしようかと思ったのですが、
大阪地裁の判決に触れないわけにはいかないので、
軽く記録的な意味も込めて紹介しておきます。

そもそも初めて聞いた、という方はこちらを読んで流れをつかんでいただければ。

同性どうしの結婚が認められていないのは憲法に違反するとして、
同性のカップルが国に賠償を求めた裁判の判決。

  20日の判決で、大阪地方裁判所の土井文美 裁判長は「婚姻の自由を定めた憲法24条は、男女の間での結婚を想定したもので同性間を含むものではない」として、法律の規定は憲法に違反しないと判断しました。また、法の下の平等を定めた憲法14条との関係でも「異性間の結婚は、男女が子を産み育てる関係を社会が保護するという目的で定着した制度だが、同性間の関係性にどのような保護を与えるかは議論の過程にある」として、違反しないと判断し、訴えを退けました。 

個人的に印象に残ったツイートをいくつか。

おいしいドブ
@sweet_dobu
同性カップルとして5年以上同棲してて、今日もスーパー銭湯までドライブして帰りにららぽーと寄っていきなりステーキ食べて「久々に食べると美味しいね〜」って笑い合っておうち帰って同じベッドの上で眠る彼女のことを「想定されてない」の一言で死ぬまで他人扱いされるの、やっぱちょっとつらいよ。
2022/06/21 23:59
12061Retweet 110364Likes

映画『チョコレートドーナツ』
@donuts_movie
いい言葉が見つからずに1日経ちました。
札幌の判決が出た時に、楽観的に「これで流れが変わる!」と思ったのですが、安易だった。
何より「合憲でよかった」とおっしゃった人がいるという記事に目を疑いました。
「正義なんてないんだな」
「でも、戦うんだよ」
2022/06/21 23:32
402Retweet 1493Likes

B・クリッツァー:『21世紀の道徳』発売中
@BenjaminKritzer
この議論は、結婚や婚姻の価値は「生殖」ではなく「絆」のほうに存在する、したがって生殖を伴わないものであっても絆(親密性)という理由だけから婚姻関係は国による保護の対象とすべきである、もちろん同性婚もそこに含まれる、という主張にも繋げられると思います。
B・クリッツァー:『21世紀の道徳』発売中 @BenjaminKritzer
『21世紀の道徳』の「ロマンティック・ラブを擁護する」では、既存の倫理学や政治哲学ではモノガミー的な恋愛関係(「ふつうの恋愛」)の価値が無視されてきたことを指摘したうえで、恋愛対象の相手と絆を結ぶ関係を築くことには倫理的な価値がある、という議論をしました。 https://t.co/yaU04rBp6z
2022/06/22 10:25
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まるだし@渋谷
@yu___tt00
若いゲイの方の「同性婚より男女と同等の権利があればいい」「制度より気持ち悪がられなければいい」という投稿が流れてきて、彼らに伝えられる術が僕にないのが悔しい

全て解決とは思わないけど、訴訟自体が「権利を適正に行使させて」という戦いだし、制度があれば眼差しを変える非当事者も必ずいる
2022/06/21 12:15
3Retweet 21Likes

当事者として、いろんな人の意見を読んでましたが、
なかなか辛いものがありますよね。


三歩進んで二歩下がる、な状況からなかなか抜け出せない日本。

それでもツイッタートレンドに取り上げられたり、議論が大きくなってきたり。
着実に前に進んでいることはまちがいないかと。
それを信じるしかないよね、僕たちは。

今回はこの辺で終わり。

お便り・感想は #ドーナツレターでお待ちしてます。
(このメールに直接返信していただいても届きます)

***

ということで、今後も毎月24日はエッセイ的な配信をすることになりました。

( "虹"にかけているのと、
毎月配信の9日からちょうど半月後という事情で24日になりました)

次のエッセイ配信はフード系の話題になるかと。
次回は9日にいつもどおりの配信なのでお楽しみに。

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